床上小哲学|Vol.81〜90 - 声にならない気配と、やさしく並ぶ
床上小哲学|The Floor Notes Vol.81〜90
Vol.81|音がしない、でも気配はある。
誰もしゃべっていないのに、
ソファの上と、床の上で、
ふたりの呼吸がそっと重なっている。
Vol.82|床に寝転ぶと、心が少しずつほどける。
天井を見上げる視線の先に、
今日の疲れがゆっくり浮かび上がる。
言葉じゃなくて、重力が気持ちを整えてくれる。
Vol.83|小さな音が、暮らしの輪郭になる。
お湯の沸く音、猫が歩く音。
床に近づくと、世界が少しだけ拡大する。
聞こえなかった音に、日常の深さがある。
Vol.84|窓のそばにローソファ。
外と中の境目に、やわらかく座れる場所。
風の気配と、わたしの呼吸が、
おだやかに交差する。
Vol.85|この高さだから見えるものがある。
テレビじゃなくて、壁の陰影。
スマホじゃなくて、差し込む光。
低い場所には、低い視点の美しさがある。
Vol.86|話さない時間の、その奥にあるもの。
話すことが正義じゃない。
黙って座る時間が、ふたりの関係を育ててくれる。
床があるから、それができる。
Vol.87|“ひとり”の時間に、説明はいらない。
誰とも会わない午後を選んだ理由は、
べつに説明しなくていい。
床に座っているだけで、ちゃんと納得できるから。
Vol.88|光の向きで、部屋の気分が変わる。
いつもと同じ場所なのに、
カーテンのすき間から射す光の角度で、
ソファも床も、ちがう顔になる。
Vol.89|座る場所で、性格まで変わるかもしれない。
床に座ってから、せかせかしなくなった気がする。
ローソファに沈む時間が、
“ちょっとだけ穏やかなわたし”をつくってくれる。
Vol.90|変わらない高さが、安心になる。
部屋の模様替えをしても、
ローソファと床の高さだけは変わらない。
いつでも戻ってこれる感覚が、そこにある。