床上小哲学|Vol.51〜60 - 季節、空気、気配。すべてが床と通じている

床上小哲学|The Floor Notes Vol.51〜60

Vol.51|床に座ると、風の音が違って聞こえた。

窓を開けた午後、ローソファに沈んだ。

床に近いだけで、風の音が少しだけ深く聞こえる。

耳じゃなくて、身体が季節を感じていた。

Vol.52|夏の朝、素足と床の会話。

冷たい床板の感触が、目覚めにやさしい。

ソファに座るより先に、素足が一日を始めてくれる。

床とわたしの間に、言葉のいらない会話があった。

Vol.53|“季節のにおい”は、床から立ちのぼる。

湿った梅雨の午後、

畳の香りとローソファのクッションが、

心をほどく準備をしてくれていた。

Vol.54|照明じゃない、時間の明るさ。

夕方になると、照明は同じなのに部屋が違って見える。

床に座ると、その光のグラデーションが

1日の終わりを優しく知らせてくれた。

Vol.55|ブランケットの重みと床の安心。

冬の夜、ローソファで肩までブランケットをかける。

低い場所にいるだけで、

心の防寒もできた気がした。

Vol.56|湿度と感情は、案外似ている。

床が少し冷たい朝は、気持ちもきゅっと縮こまる。

だからこそ、ローソファに座った瞬間のぬくもりが、

ほっと心をほどいてくれる。

Vol.57|気配を伝える、目に見えない風。

カーテンが揺れた。

それだけで、家の中に“自然”が入ってきた気がした。

ローソファからの視線は、それを歓迎していた。

Vol.58|ローソファの上に、冬が座っていた。

ストーブの前のローソファは、いつもより温かい。

猫も、人も、そこでじっとしているだけで、

冬の時間を味わっていた。

Vol.59|湿気と一緒に、心もすこし重たくなる。

でも、その重さごと、受け止めてくれるのが床だった。

ローソファの座面が、今日のわたしを受けとめる高さ。

Vol.60|春の光が、床に寝そべっていた。

朝、カーテン越しにやわらかい光が差す。

床とソファに寝そべる猫の背中が、

春の気配を吸い込んでいた。